大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪家庭裁判所 昭和54年(少)2291号 決定

少年 E・T(昭三八・六・二〇生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、

1  Aと共謀のうえ、K子(昭和三七年一月一日生)が満一八歳に満たない児童であることを知りながら、同女をして、昭和五三年一二月二八日午後一〇時一〇分ころ、大阪市都島区○○○○×丁目×番××号アパート○○荘××号室において、Bを相手に、同月二九日午後九時ころ、同市同区○○町×丁目×番×号ホテル○○○において、Cを相手に、さらに同月三〇日午後八時四〇分ころ、同市同区○○○○×丁目×番××号ホテル○○○において、Dを相手にそれぞれ売淫させ、もつて、児童に淫行をさせた

2  別紙窃盗行為一覧表のとおり、同表共犯者欄記載の者と共謀のうえ、同表記載の日時・場所において、同表被害者欄記載の者所有の同表被害品欄記載の財物を窃取した

ものである。

(適用法条)

1の事実につき、児童福祉法三四条一項六号、六〇条一項、刑法六〇条

2の各事実につき、刑法二三五条、六〇条

(処分の理由)

1  少年は、父親服役中に出生し、小学校時代は一家転居に伴ない転校をくり返し、昭和五〇年五月(当時父親服役中)、○○○学園に入園し(同年九月父母協議離婚、親権者父)、昭和五二年三月、父出所後父に引取られ、それを機に、母・妹を交えて一家四人で暮すようになつた。このころ、○○中学校に転入し、同中学二年時に犯した強姦未遂外保護事件で、昭和五三年四月一〇日、保護観察に付する旨の決定を受けた。同年四月、三年生に進級後、当初規則正しい日々を過ごしていたが、同年七月、一〇月末と家出があり、後者は長期間にわたり、家出中に本件窃盗・児童福祉法違反の非行を重ね、昭和五四年一月末帰宅したが、同年二月二三日逮捕され、審判を受けたものである。

2  少年の父は少年幼少時から服役をくり返し、母は二児を抱えて生活に追われ、少年は性格形成の重要な時期に一家揃つた暖かい家庭を体験することなく育ち、かようなおいたちから、少年には家族の中心となり一家を支えるといつた男性像が与えられず、粗暴で乱暴な面のみを父から模倣してきたといえる。○○○学園を退所し、○○中学校へ通うようになつて後は、同中学で、喧嘩・教師への暴行・喫煙・怠学・不純異性交友等の問題行動が続発したものの、同中学校での熱心な指導教育により、特に中学三年生に進級して以後、少年は自らの生活を立直す努力(規則正しい生活への努力、クラブ活動・学校行事への積極的参加、進学への希望等)を示し始めている。これは周囲の少年に対する援助と、これに答えようとする少年の努力を示すものとして評価したい。しかしながら、今回の非行の内容、背景(家出、少年が小学校時代を過ごした○○地区での徒遊、不良グループとの安易なかかわり、不良成人との交際)、及び鑑別結果通知書・少年調査票に指摘されている少年の性格特性等を考慮するとき、少年はその抱いている価値感及び人間関係の持ち方において、生育歴に負うている所が多いと思われる未だ解決されていない根深い問題をかかえているといわざるを得ない。

3  少年の保護環境は、これまで述べてきたことのほか、父は近時事件を起こして実刑判決を受けたとのことであり、母も家庭崩壊、重なる少年の非行で、子の指導に自信を失い、進学・就職等少年の将来に対する確たる方針もない。少年にとつて家庭は安息の場所ではなく、些細なことで父母といさかいがあると、家出という形でそこから逃避することが重なつていた。従つて、現在、少年の家庭は少年を適切に保護・指導できる状態にあるとは認め難い(なお、今後の少年の更生を期するためには、両親が少年の心情を理解し、親としての自覚をもち、その責任を果たしてゆくことが是非とも必要であると思料する)。

4  以上によれば、少年の健全な育成を期するためにはその性格、これまでの行状、環境等に鑑み、初等少年院に収容して指導訓練を施すのを相当とするので、少年法二四条一項三号により主文のとおり決定する。

(裁判官 大野博昭)

窃盗行為一覧表

番号

共犯者

犯行年月日

(昭和年月日頃)

場所

被害者

被害品

品名

数量

時価(円位)

五三・一二・四

午前二時

高槻市○○○丁目×番×号○○○駐車場

タイヤ

シートカバー

バックミラー

四〇、〇〇〇

一〇、〇〇〇

二、〇〇〇

同上

同日

午後〇時

高槻市○○○×丁目××番×号M子方

M子

現金

腕時計等三二点

五、〇〇〇

五九三、五〇〇

同上

五三・一二・二八

午後一〇時

高槻市○○町×丁目××番××号N子方

N子

現金

指輪

五、〇〇〇

一〇、〇〇〇

スーツ

三〇、〇〇〇

F子

五三・一二・二九

午前一時

茨木市○○町×番××号○○○前駐車場

サングラス

高速券

一四

一〇、〇〇〇

三、五〇〇

同上

五三・一二・三〇

午前三時

茨木市○○町×番××号○○モータープール

免許証

シガーライター

一、五〇〇

五四・一・三

午前四時過ぎ

高槻市○○○町×番×号○○○駐車場

シートカバー

二〇、〇〇〇

処遇勧告書〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例